語源
宇佐市の「宇佐」は、古代の文献にさかのぼる地名です。『古事記』では宇沙、『日本書紀』では菟狭と記され、神武天皇の東征の際に菟狭津彦が一行を歓待した場所として語られます。また『日本書紀』には、天孫降臨に先立って比売大神が天降った「宇佐島」を当地とする記述もあります。
ただし、これらはいずれも**「うさ」という音がいつから記録に現れるか**を示すものであって、その語が何を意味したかを説明するものではありません。語義については広く定着した説が確認できず、本記事では由来未詳の地名として扱います。
注意すべきは、宇佐神宮との前後関係です。全国八幡宮の総本社である宇佐神宮の社名は、この地名を冠したもので、明治6年(1873年)に定められました。地名が神社から生まれたのではなく、地名が先にあって社名がそれを採った関係にあたります。
なお、ローマ字表記が「USA」と一致することから生まれた都市伝説がしばしば話題になりますが、これは近現代の偶然の一致であり、地名の由来とは関係がありません。
歴史的変遷
| 時代 | 呼称 | 備考 |
|---|---|---|
| 飛鳥 | 宇沙・菟狭 | 『古事記』『日本書紀』に見える表記 |
| 奈良 | 豊前国宇佐郡 | 律令制下の郡名として定着 |
| 明治 | 宇佐神宮 | 明治6年(1873年)、地名を冠した社名が定められる |
| 昭和 | 宇佐市 | 宇佐町・駅川町などの合併により市制施行 |
地名の特徴
宇佐は、古代の記録に早くから現れながら語義が解けていない地名の一つです。全国八幡宮の総本社を擁するため神社の名で知られていますが、地名と社名の前後関係は逆で、地名のほうが古層にあります。
大分県北部の海・平野・山がそろう地形の中で、古代以来の信仰と地域の暮らしが重なってきた点も、この地名をめぐる関心を集めてきた理由です。