語源
和束の地名は、奈良時代の『万葉集』に見える「和豆香」が初出とされます。大伴家持が安積親王の死を悼んで詠んだ歌に「わづか杣山」とあり、当時すでにこの地域を「わづか」と読んでいたことが分かります。
その後、平安時代末ごろから「和束」という表記が見られ、ほかに「輪束山」「輪塚」などの表記も確認されています。地名の意味そのものは断定しにくいものの、古くから山の木を採る杣山として認識されていた地域であり、山地の地勢と結びついた呼称と考えられます。
歴史的変遷
| 時代 | 呼称 | 備考 |
|---|---|---|
| 奈良 | 和豆香 | 『万葉集』に見える表記 |
| 平安末〜鎌倉 | 和束荘・和豆香杣之荘 | 寺社の荘園としての呼称 |
| 江戸 | 和束郷 | 14ヶ村の地域的まとまり |
| 明治 | 西和束村・中和束村・東和束村・湯船村 | 町村制下の村名 |
| 昭和 | 和束町 | 1954年に3村合併で成立、1956年に湯船村編入 |
地名の特徴
和束町は、地名の古さが文献上はっきり確認できる数少ない地域の一つです。『万葉集』に登場するだけでなく、平安・鎌倉期には寺社の荘園、江戸時代には皇室領として位置づけられ、地名と土地支配の歴史が重なってきました。
また、和束川流域の山あいに広がる茶畑景観でも知られ、地名の歴史とともに、山地の地形を生かした暮らしと産業が現在まで続いています。