語源
豊岡市の名は、円山川下流に開けた城下町「豊岡」の名を、近世以降の行政区画が次々に引き継いできたものです。豊岡藩、明治の豊岡県、町村制による豊岡町を経て、昭和25年(1950年)の市制施行で豊岡市となりました。
この名が現れる直接のきっかけとして通説になっているのが、天正8年(1580年)の改称です。羽柴秀吉による第二次但馬征伐で山名氏が退けられたのち、秀吉配下の宮部継潤(宮部善祥房)が2万石で当地に入り、それまで城崎と呼ばれていた地を「豊岡」と改めたと伝えられます。豊岡市の公式サイトも、宮部が神武山に城を築いて城下町の形成に着手したこの年を「豊岡のまちの始まり」としています。
注意したいのは、名の流れが城の名から地名へではなく、地名から城の名へという向きだという点です。この城は永享年間(1429〜1441年)に山名持豊(宗全)が此隅山城の出城として築いたもので、もとは当地の呼称にちなむ木崎城(城崎城)と呼ばれていました。地名が豊岡へ改まったことに伴って城の名も豊岡城として定着したとされ、市名と城名はいずれも地名「豊岡」から枝分かれした関係にあたります。豊岡市の名が城名を受け継いだわけではありません。
ただし、この1580年改称説には異論もあります。但馬の地名を扱う研究サイト「但馬国ねっとで風土記」は、弘安8年(1285年)の『但馬太田文』の城崎郷にすでに「豊岡」の村名が見えること、『但馬故事記』に「豊岡原」の呼称があることを挙げ、山名氏の時代より前から豊岡の名は存在したとみています。この立場に立てば、1580年は新しい命名ではなく、既にあった小地名を城下町全体の名へ押し広げた「採用」の年ということになります。
いずれの説を採るにしても、「豊岡」という語そのものが何に由来するのかは明らかになっていません。「豊」は地名に好んで用いられる佳字であり、「岡」は高まった土地を指す一般的な地形語ですが、市域のどの高まりを指したのか、あるいは佳字を並べた嘉名にすぎないのかを裏づける史料は確認できませんでした。ここでは推測を避け、名がどう受け継がれたかまでを記すにとどめます。
歴史的変遷
| 時代 | 呼称 | 備考 |
|---|---|---|
| 室町 | 城崎(荘・郷)/木崎城 | 永享年間、山名持豊が此隅山城の出城として木崎城(城崎城)を築く |
| 安土桃山 | 豊岡/豊岡城 | 天正8年(1580年)宮部継潤が入城。地名が豊岡と改められ、城名も豊岡城となる |
| 江戸 | 豊岡藩 | 寛文8年(1668年)京極高盛が丹後田辺から移封。城下町・商工業の町として発展 |
| 明治 | 豊岡県 | 明治4年(1871年)廃藩置県により但馬8郡・丹波3郡・丹後5郡を管轄する豊岡県が置かれ、県庁所在地となる(明治9年廃止) |
| 明治 | 豊岡町 | 明治22年(1889年)町村制施行により豊岡町ほか9か村が成立 |
| 昭和 | 豊岡市 | 昭和25年(1950年)豊岡町と五荘村・新田村・中筋村が合併し、県下10番目の市制を施行 |
| 平成 | 豊岡市 | 平成17年(2005年)4月1日、豊岡市と城崎町・竹野町・日高町・出石町・但東町の1市5町が合併し、改めて豊岡市が発足 |
地名の特徴
豊岡の名は、一つの城下町の呼称が藩・県・町・市と単位を替えながら、名前だけは変えずに受け継がれてきた例です。とくに明治4年からの5年間だけ存在した豊岡県は、但馬・丹波・丹後にまたがる広域を管轄しており、現在の市域をはるかに超える範囲がこの町の名で呼ばれていた時期がありました。
一方、豊岡へ改称される前の「城崎」の名も消えたわけではなく、郡名(城崎郡)や温泉地の名として残り続けました。平成17年(2005年)4月1日の1市5町の合併で城崎町が豊岡市の一部となり、城崎郡そのものは消滅したことで、いまは同じ市の中に新旧2つの呼称が並んでいます。
特産・名物
豊岡市は、「かばんのまち」として知られる職人文化と、豊かな自然が生み出す高品質な食料品が魅力です。代表的な特産品としては、以下のものが挙げられます。
但馬牛(神戸牛) 兵庫県を代表するブランド和牛の一つである但馬牛は、豊岡市でもその美味しさが堪能できます。但馬牛は有名ブランド牛のルーツとも言われ、きめ細かい霜降りと上質な脂の甘みが特徴です。自然豊かな環境のもとで生産者が一頭一頭丁寧に育てており、食卓を彩る贅沢な味わいが楽しめます。
豊岡鞄(かばん) 「国内最大級のかばんの産地」として名高いのが豊岡市です。長年培われてきた職人の技が光る「豊岡鞄」は、バッグや財布などのファッションアイテムからビジネス用品まで幅広く展開されています。品質とデザインを兼ね備えた逸品は、贈り物としても非常に人気が高い特産品です。
コウノトリ育むお米・特別栽培米 豊かな自然環境のもとで育てられた農産物も豊岡市の魅力の一つです。「コウノトリ育むお米」をはじめとする無農薬や減農薬の特別栽培米は、人にも自然にも優しい食生活をサポートします。また、採れたての旬の野菜セットなど、地域に根差した新鮮な食材が豊富に手に入ります。