語源
「静岡(しずおか)」の地名は、現在の静岡市葵区の北西にそびえる**賤機山**に由来する。「しずはた」は機織り(織機)に従事する人々が暮らした山であることを意味するとも伝わる。
1869年(明治2年)、藩庁内での協議で当初は「賤ヶ丘(しずがおか)」という地名案が有力候補となった。しかし藩校の長を務めた学者・**向山黄村(むこうやまこうそん)**が、「賤(しず)」という字が身分の低さや卑しさを連想させるとして問題視し、同音の「静(しず)」へと改字することを提案した。この案が全会一致で可決され、1869年6月20日に旧来の「駿府・府中」から「静岡」への改称が公布された。
「静」の字は「静かで穏やか」という意味を持ち、新時代の平和を願う名前としてふさわしいと判断された。
県名確定の経緯
「静岡」という地名が成立した後、1871年(明治4年)の廃藩置県で「静岡県」が発足した。当初は駿河国・遠江国・伊豆国が別々の県として分かれていたが、1876年(明治9年)に浜松県が静岡県に合併され、現在の静岡県域がほぼ確定した。
旧地名「府中(ふちゅう)」が「不忠(ふちゅう)」と同音で新政府への忠誠を示さないと解されるおそれがあったことも、改名を急いだ一因とされる。
歴史的変遷
| 時代 | 区分・名称 | 備考 |
|---|---|---|
| 律令期 | 駿河国・遠江国・伊豆国成立 | 東海道に属す三つの令制国 |
| 鎌倉〜室町 | 駿府(すんぷ) | 今川氏の拠点として栄える |
| 江戸時代 | 駿府・府中 | 徳川家康が大御所として隠居。城下町として繁栄 |
| 1869年(明治2年) | 静岡へ改称 | 賤機山の「賤」を「静」に改字して命名 |
| 1871年(明治4年) | 静岡県成立 | 廃藩置県で駿河・遠江・伊豆が分立 |
| 1876年(明治9年) | 浜松県と合併 | ほぼ現在の静岡県域が確定 |
地名の特徴
「静岡」という地名は江戸時代以前には存在しない、明治初期に意図的に創られた地名である。同音の漢字を入れ替えることで、地名の語感は保ちつつ字義を刷新するという手法は珍しく、命名の経緯が史料に明確に残る点でも特徴的な地名といえる。現在も「静岡の由来」碑が静岡市内に建てられており、命名の故事を伝えている。