語源
辰野町の地名由来は、現在のところはっきりとはわかっていません。町公式ホームページでは、辰野の歴史は古いものの、由来については不明としたうえで、いくつかの伝承を紹介しています。
代表的な伝承では、昔の辰野は湖で、そこに一匹の竜が住んでいたとされます。大雨で湖の水があふれ、荒神山の東西が切り崩されて水が流れ出すと、湖は干上がり、竜も天へ昇ったため「辰野」と呼ばれるようになった、というものです。荒神山の地籍名「樋口」も、水が流れ出たことに由来するとも伝えられます。
また、江戸時代後期の国学者・松沢義章の『洲羽国考』には、この一帯に「天ノ竜ノ海」と呼ばれる湖があり、天竜川の流路変化によって湖が沼から干潟へと変わり、辰野の地名が残った、という趣旨の記述が見られます。
歴史的変遷
| 時代 | 呼称 | 備考 |
|---|---|---|
| 平安 | 竜市 | 『吾妻鏡』治承4年(1180年)9月10日の条に見える初見とされる地名 |
| 江戸 | 辰野村 | 高遠藩政下で上伊那郷の辰野村 |
| 明治以降 | 辰野町 | 町制施行後の現行地名 |
地名の特徴
辰野町の由来には、竜・湖・川の流れが深く関わる伝承が共通しており、地形の変化を地名に結びつけた例として興味深いものです。天竜川流域の地名らしく、水害や流路変化の記憶が物語化された可能性も考えられます。
同様に、竜や水の伝承を伴う地名は長野県内外に見られますが、辰野町では町公式資料や民俗資料に複数の伝承が残されている点が特徴です。